事業を始めたものの、価格が妥当なのかわからない。
こんなお悩みをお持ちの事業者さんは多いと思います。
そんな方に向けてこの記事を書きました。
ご一読頂くと下記がわかります。
適正価格設定の方法
安く売りすぎてない!?適正価格の設定方法
1、原価と経費を正確に把握
まずは、原価&経費を可能な限り正確に把握することが重要です。
原価と経費を正確に計算してみたら赤字で売っていたというケースもよくあります。
経験的には実際のコストに対して安く売りすぎている傾向にあります。
特におろそかになりがちなのが経費です。
雑貨店を例に①原価と②経費を考えてみます。
①原価
雑貨店では原価はシンプルに仕入価格になります。
10個あたり3000円で仕入れたカップであれば、原価は300円/個です。
②経費
雑貨店だと経費として、人件費、光熱費、家賃、通信費、などが考えられます。
これら経費の合計をカップ1個に割振ります。
例えば経費の合計が30万円/月とします。
経費の割振り方は色々ありますが、
店舗の棚卸資産全体(60万円)のカップがあると仮定すれば、1個(300円)がしめる金額は0.05%です。
経費は300,000×0.05%=150円/個となります。
結果として①原価+②経費=450円/個となります。
当然ですが、450円/個以下の価格で売ると儲かりません。
にも関わらず、仕入れた300円/個以下で売らなければ大丈夫と考えてしまっている事業者さんに時々会います。
2、各業界・業種ごとの利益率の目安と比較
可能な限り正確な原価と経費がわかったら、いよいよ適正価格の設定です。
適正価格は、業界・業種ごとの利益率の目安を把握しましょう。
Google検索に「業界 利益率 目安」と入れて検索します。
特殊な業界でない限り、何かしらの手がかりが見つかります。
例えば、中小企業実態基本調査やTKC経営指標などがあります。
下記のTKC経営指標のサイトからは様々な業界・業種の財務指標がわかります。
https://www.tkc.co.jp/bast/disp_bast.asp?param=site:zenkokukai,gyosyu:kouri
TKC財務指標を見ると、先ほどの雑貨店は5793洋品雑貨・小間物小売業に該当します。
価格を決めるうえで重要なのが売上高経常利益率6%です。
カップの①原価+②経費=450円/個と売上高経常利益率6%から、適正価格を求めます。
{適正価格ー(①原価+②経費)}÷適正価格×100=*経常利益率6%という方程式ができます。
*営業利益率がわかる場合は、経常利益率ではなく営業利益率で計算します
数値を入れてみると
{適正価格ー450円}÷適正価格×100=6%
100適正価格ー45000=6適正価格
94×適正価格=45000円
計算すると適正価格は478円/個となります。
このときの粗利率は(478円-300円)÷478円=37.2%です。
このように原価&経費と業界業種ごとの利益率の目安がわかると、適正価格を算出することができます。
なお、上記のように原価&経費に利益を乗せて価格をつける方法をコストプラス型価格設定法といいます。
3、顧客はいくらなら買ってくるれるか
適正価格の目安がわかっても、それだけで価格を決めるのは危険です。
お客さんが受け入れてくれてこその商売だからです。
お店のターゲットに当てはまる友人がいたら「いくらなら買う?」と率直に質問してみましょう。
適正価格の水準と比べて大きく乖離するようであれば、価格を再検討しましょう。
特にオリジナルティの高い商品は、適正価格よりも上振れすることがあります。
その場合は価格を高く設定することをお勧めします。
このように、お客さんの意見を聞いて価格を検討する方法を需要志向型価格設定法といいます。
4、競合との価格比較
適正価格を算出しお客さんの声を聞いたら、競合の雑貨屋を覗いてみます。
お客さんがあなたのカップと購入を迷うカップの価格を調べましょう。
同じようなカップが自店舗478円で競合450円であるとします。
お客さんが迷ったあげく競合の450円のカップを買うようであれば、価格設定を近づけることも考えます。
これを競争志向型価格設定法といいます。
ただし、中小企業や小規模事業者は価格勝負は避けるのが基本です。
価格で戦わなくとも、独自の品揃えやオーナーの人柄・知識が付加価値となるからです。
5、価格戦略
これまで紹介したコストプラス型価格設定法、需要志向型価格設定法、競争志向型価格設定法、以外の3つメジャーな価格戦略を紹介します。
小規模事業さんには当てはまらない戦略も多いので、参考としてお読みください。
ペネトレーションプライシング
ペネトーレンションとは浸透という意味で、初期に価格を安く設定しシェアをおさえてしまうための価格戦略です。
顧客数が増えても変動費がほとんど変わらず、シェアが増えれば増えるほど競争優位性が増す業界で選択されます。
わかりやすいのがITソフトウェア会社などです。会計関係のソフトウェアであれば、早めにシェアを獲得するとスイッチングコスト(他社に切り替えるコスト)が高いので中長期で安定した利益が得られます。
スキミングプライシング
スキミングとは上澄みという意味で、初期に価格を高く設定して利益を確定させるための価格戦略です。
ペネトーレンションプライシングとは逆の考え方ですね。
新作ゲームや映画、など発売後に価値が落ちていく一方のものに対して取られることが多いです。
ダイナミックプライシング
購入するタイミングによって価格が変わる戦略で、繁忙期は高く閑散期は安く設定されるのが基本です。
飛行機やホテル・旅館の価格設定でお馴染みですね。
民泊や旅館・ホテルを経営されている場合は、1部屋あたりの原価+費用以上であれば空室を作るより宿泊してくれた方が助かります。
ただし、ホテルや旅館のイメージからかけ離れた安価な価格はブランディングを傷つけることになるので注意してください。
まとめ
- 原価+費用で出来るだけ正確にコストを把握してください
- 特に費用は計上漏れが起きやすいのでより慎重に計算します
- Googleで検索して自業界や業種の利益率の目安を調べます
- コスト(原価+費用)と利益率の目安がわかったら適正価格を算出します
- お客さんの声や競合の価格から算出した適正価格を調整して、最終的な価格設定をします
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